ただ、あるがままに



―――読経している声が遠くから聞こえてくる。
別に経が珍しいわけでもない。
自分の保護者(飼い主)が最高僧であるために寺院に身を置いていた。
こんな光景は朝から聞きなれている。

悟空はゆっくりと身を起こした。
そこには寺院での三蔵の部屋―――または自室ともいう―――のベットの上にいた。
自分の肩には茶色がかった髪の毛がかかっている。
ちょうど悟空が三蔵と出会ってから3ヶ月が過ぎたくらいだった。
3ヶ月前には今のような生活をしてるなんて夢にも思ってもいなかったし、なにより一緒に傍にいる人が出きるともこれっぽっち思ってはいなかった。


ガチャ

ドアが開く音がして三蔵が入ってきた。
悟空は反射的にまたベットへと毛布をかけて横になった。
「おい、熱は下がったか?」
三蔵が悟空がいるベットへと近づいてきていつもの無表情で話しかけてくる。
その言葉に「心配」という文字は伺えなく、これが三蔵にとっての精一杯の優しさだともこのときは気付く事はできなかった。
「え・・・、うん大分いいみたい・・・。」
「そうか」
三蔵は悟空の答えを聞くと同時にベットの近くの椅子へと腰を下ろした。
「しかしなんでこんなくそ忙しい時期に風邪なんて引くんだよ。馬鹿は風邪なんてひかねぇんじゃねえのかよ?」
皮肉たっぷり三蔵が言い放った。
どうやらこの時期は寺院が色々と忙しいらしい。
「あ、そのごめん・・・。えっと犬たすけようとして・・・。」
「犬?」
「うん、川に犬が落ちちゃったからたすけようと・・・」
「お前が飛び込んだわけか?」
三蔵は呆れの意味を混めた溜息をついた。
暖かくなってきたとはいうのものの、まだ水泳には早い時期だ。
そんな中で普通に考えて川に飛びこんだりするのだろうか?
いや悟空と常識を照らし合わせるほうが間違えであろう。
「だってさ・・、すっげぇ寒そうだったんだぜ!可哀想だろ!それにさ、それにさまだ生れてちょっとしかたってないような子犬だったし・・・。川なんて冷たい場所に1人っきりでおいとかれちまったら可哀想だろ!三蔵だってそう思うだろ!誰かが助けてあげなくちゃダメだろ!!」
語尾はほとんど叫びに近い状況になっていた悟空だったが、言い終えると三蔵の方を見た。
そこにはいつもの無表情ながらも何かを考えているような三蔵の姿があった。
「・・・・・」
妙な沈黙が流れていた。
悟空にとっては何より痛い空気でしかなかった。
三蔵は考えていた顔を上げ悟空に視線をやる。
「もういい、さっさと寝て早く治せ」
命令形のいつもと変わりない口調だったが、悟空にはなんだか三蔵の優しさが含まれているように聞こえた。
「・・・・うん!」
悟空は瞼を閉じた。
しばらくして規則正しい寝息が聞こえてきた。
三蔵は毛布をきちんとかけなおしてやり、近くの洗面器へと手を伸ばした。
濡れたタオルを悟空の頭へとかけてやる。
そっと禁錮をなで、髪をかきあげた。
三蔵は安心しきったように眠る悟空の顔をマジマジと眺めていた。
付き合いこそ短いもののやる事なす事全てが三蔵にとっては新鮮、――常識はずれともいう――に見えた。
いや、新鮮過ぎてウザク感じてしまう事がほとんどだったが。
でもその一つ一つの行動が自分自身を救っているとも知らずに三蔵はいた。

悟空が先ほど言っていた『犬』の事。
過去の自分と重ねていたことは確かだ。
でも別にそうだからといってその犬に、助けた悟空に特別な感情などは沸かなかった。
ただ思ったのは悟空と同じ行動をとった光明三蔵の事。
本当なら悟空を精一杯日ごろのストレスの奴あたりと一緒にぶっ叩こうと思っていたのだが、その事を考えるとそういう気分になれなかった。

もう一度悟空の額のタオルを取り替えてやった。
寺院は忙しい時期なので三蔵にも山のように仕事が次々と舞い込んできている。
今こうして悟空の看病をしているだけでも着々とスケジュールは遅れ、周りの僧たちは泣いている事だろう。
しかしそこは最高僧三蔵。別に気にするそぶりは見せず、他人が泣こうと叫ぼうと死のうと、自分に被害がなければそれでいいのだ。
三蔵は
その横のベットでは悟空がぐっすり熟睡している。
しばらくは起きそうにないだろう。
そんな悟空の様子を眺めながら三蔵は溜息をついた。
廊下の方でバタバタと人が忙しそうに走っている足音が聞こえてくる。
その足音がひとしきり止むと今度は逆に離れた正門の方が騒がしくなってきた。
フーっと三蔵は盛大に溜息をつくと今度悟空が目を覚ましたときにでもリンゴか何かを食べさせようと思い、厨房へと行こうとした。
椅子から立ち上がるとドアの方へと歩き出した。
ハズだった。
正確には椅子から立ち上がるまではできた。
しかしその後のドアへと向う行動が止められてしまった。
原因はベットから伸びてきて自分の法衣をつかんでいる手。
その手の持ち主は眠っている悟空。
どうやら無意識の内に掴んでいるらしい。
三蔵はなんとかとろうとその手を上から起こさないように握った。
しかし悟空は今度は法衣から三蔵の手へと掴んでいるものを変えた。
「・・・っち」
自分の手を必死に握ってくる小さな手を振り払う事が三蔵にはできなかった。
しょうがない、と三蔵は自分に言い聞かせ手を握ったまままた椅子へと腰をかけた。

「・・いや・・・いかな・・・、いか・・・、行かないで・・・。」
悟空の寝言。
三蔵は一緒に暮らし始めてはや3ヶ月。
寝言は何度か聞いた事はあった。
その内容はほとんど食べ物か三蔵の名前だった。
しかし今悟空が言っているのはそんな楽しそうなものではない。
今にも泣き出しそうに顔を歪めて精一杯三蔵を握る手に力をこめてきた。
三蔵は余っている片方の手でまた悟空の髪をかきあげ、そして今度は頭を撫でてやった。
そうすると悟空は幾分か落ちついたようにまた眠りへと落ちて行った。

三蔵は悟空の手をしっかりと握ってやり、それに答えるように悟空も手に力をこめてきた。
しっかりと繋がれたふたりの手。
「・・・・どこにも行かないで欲しいんだったら後ろからしっかりついて来いよ・・・・。」
三蔵は悟空が落ちついて寝息を立てている事を確認すると、ゆっくりと小さな声で悟空の耳元に囁いた。







いやああああvvv超素晴らしい小説を頂いてしまいました!!!もう、こんなサイトにアップするのが申し訳ないくらい素晴らしいです!!!なんと鼎様のサイトでキリ番じゃないのに、いい数字を踏んだと報告したら書いて頂ける事になったのです。なんてお優しい・・・vvvリク内容は確か「猿を看病する三蔵」だったかと。自分で言ってて忘れてます(死)もう、無い頭振り絞って考えましたよ。自分で書くとどう考えてもオチが見え見えなネタだけど、人様が書くと素晴らしい話が出来上がるネタを(笑)予想通りの素晴らしき93ですvvv佐喜大歓喜!パソの前で踊ってます!所で、この小説にはタイトルが付いておらず、鼎様はなんと佐喜にタイトルを付けさせると言う暴挙に出ました。・・・凄まじい程センスの無いタイトルを付けて済みません・・・こってこてだとか内容と全然違うとか言うツッコミは無しにしといて下さい。一応内容に合わせたまんまタイトルも考えてはあったのですが、一番抽象的なものを選びました。でも私はこう思ったんだよ〜。三蔵の気持ちになって!(割腹)


加東 鼎様、ありがとうございました♪





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