バースディ



「ねえ、三蔵。俺の誕生日っていつ?」
 遊びに出ていた筈の悟空が、帰って来るなりの第一声はそれだった。
「知らん」
 三蔵は片づけ無ければならない書類の山に囲まれて、そんな事にいちいち答えてやっている余裕は無かった。
「なんで?どうして知らないんだよ!!」
 知らないものは知らないのだ。三蔵が悟空と出会った時、こいつは既に生きていたのだから。
 無い袖は振れん。と三蔵は黙々と仕事に勤しんだ。
 大体誰がこいつにそんな単語を教えたのか。自分は誕生日の事など教えた覚えは無い。
 大方ふもとの村の子供達にでも聞いたのだろう。
「なあさんぞー。本当に知らねーの?」
 駄々をこねる悟空に溜息を一つついて、ようやく三蔵は書類から目を離した。
「おまえなあ・・・誕生日の意味、分かって言ってんだろうなあ?」
「なんかプレゼント貰える日!!」
 予想通り、まったく分かっていなかった。
「あのな・・・誕生日っつーのは、そいつがこの世に生まれた日の事を言うんだよ。おまえはいつ生まれたかなんて分からないから、誕生日なんて分かんねえんだよ」
「えっ!?じゃあ俺だけ何にも貰えないのか!?」
「プレゼントは付属品だ!!誕生日が分かってても、何も貰えない奴もいるんだぞ」
そんなぁ・・・と、悟空はがっくり肩を落とす。余程プレゼントとやらが欲しかったらしい。
 プレゼントなんて、寺育ちの三蔵にはほとんど無縁のものだった。
 それでも光明三蔵が生存していた頃は、何かにつけて色々と与えられていた。それは主に身体の細い江流を心配して、光明三蔵がくれた食べ物であったが。
 それでも三蔵は自分にも誕生日と呼ばれる日があって、毎年光明三蔵がその日は必ず何かお土産をくれいてた事を思い出した。
 それは三蔵が本当に生まれた日ではなく、光明三蔵に拾われた日。
 光明三蔵がどういう理由でその日を三蔵の誕生日と決めたのかは分からないが、三蔵自身は自分がいつ生まれていようと、光明三蔵に拾われる前はまだ生きているとは言えなくて、拾われたその時に自分は産声をあげたのだと思っているので、その日を誕生日と呼ぶ事に、何の違和感も無かった。
 そうだ。自分こそ拾われ子で出生も分からない者なのに、誕生日がちゃんと存在するのだ。
 では、悟空は・・・−?
 五百年の間牢に閉じ込められていて、それは生きていたと言えるのだろうか?
 きっと、自分と同じだ。こいつは一度、死んだのだ。
 そしてあそこから出たときに、再び産声をあげたのだ。
「・・・分かった。俺がおまえの誕生日を決めてやる・・・」
 あの時、声が強くなった。
 進む道筋には、白い花弁が舞い降りていた。
 暖かい木漏れ日と、空気の澄んだ柔らかい季節。
「それが俺の誕生日・・・?」
「そうだ。おまえがあっこから出た日だ」
 おまえと俺が出会った日。
「嫌か?」
「ぜんぜん!・・・えへへ・・・ありがとな、さんぞー・・・vvv」
 あの暗い闇の中から、外へ出る事が出来た。
 待ち焦がれた太陽に手を触れたあの瞬間。
 三蔵と出会った大切な日。
 その大切な日を、自分の記念日にかえて。
「俺、絶対忘れないよ♪」
 大切な大切な誕生日。
 それは、世界で一番大切な、貴方と出会った大切な記念日・・・。



END.



出会ってまだ半年位の話かな・・・?猿の誕生日っていつ??とか思って書いたもの。実はつい最近まで猿の誕生日を知らなくて、急に企画立てたので大変でした。(八戒の誕生日なんて今日知ったし)<そして後日、すぐに忘れました・・・ゴメン、八戒。
さーてと、あと小説一本間に合うかなー・・・?後3時間で猿の誕生日だ!!(爆)イラストも今から書くぞ!!(実況中継生放送中)




ブラウザの戻るでお帰り下さい。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送