貴方色のジャム











 とくに理由も無かったのだが、その薔薇があんまり綺麗な深紅色だったので、つい買ってしまった事があった。
 それを持って自宅に帰り八戒にあげた所、いそいそと薔薇を花瓶に飾り、こんな事を言った。


「枯れてしまう前にジャムにして食べましょうね」


 数日後、予告通り朝のトーストと一緒に、見たことの無い深紅色のジャムが出た。






 それから暫くして、散歩中の出来事。

 たまには恋人同士のんびり散歩も良いかと思い、家からわりと近い、自然に花が群生している河原に出掛けた。
 一体何の花が咲いてるかなんて知りはしなかったが、白と黄色の絨毯を敷き詰めたような光景はとても綺麗だと思っていたから、一度二人で来てみようと思っていた。
 その花は、菜の花だったらしい。物知り博士の八戒さんが、花を摘みながら色々と教えてくれた。
そしてやっぱりこんな事を言った。


「菜の花っておひたしにするとおいしいんですよ」


 たしかツクシの時も同じ台詞を聞いたような気がするが。







 そして春。

 桜が散っている。
 桜の下には八戒が、ざるを持って立っている。
 ざるさえ無ければ美しい光景の筈なのに。
 そんな事を考えながら、一緒に花弁摘みを手伝っている自分の姿も、やはり滑稽なのだった。
「なあ・・・この桜、どうするんだ?」
 答えはわかっているのに、つい聞いてしまう。
「ジャムにするんですよv」
 ああ、やはり。
「お前って何でも食おうとするのな。色気が無えよなぁ・・・」
「悟浄だって食べるじゃ無いですか。それに、何も食い意地がはってるから食べてる訳じゃありません」
「じゃ、ナニ?」
「好きだから食べるんです」
「・・・は?」
「いや、だからですね。悟浄もタイプの女性は食べたくなるでしょう?アレと同じで、桜がとても綺麗で、好きだから、自分の一部にしたくて、食べるんです」
「・・・・そぉいうもん?」
「ええ。悟浄も死んだら食べてあげますよ・・・ああ、そのままだと筋ばっかりで煮ても焼いても食べられそうに無いから、桜の下に埋めてあげましょうか・・・。そうして、悟浄の養分を吸って綺麗に咲いた桜の花びらを、僕がジャムにして食べてあげますよ・・・」


 そう言って舞い散る桜の花弁の下で、八戒は笑う。
 俺は、阿呆のようにその顔に見取れていた。







 翌日の食卓には、トーストとほんのり薄紅色のジャムが並んだ。
 自分のジャムは、同じ桜の花びらでもあの時の薔薇のジャムのように紅いのだろうか。
 ジャムは甘美な味がした。








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やはり季節の話は書かなきゃね。つか、ギャグですか、コレ。
食して己の一部にすると言うのは私的に究極の愛の形だと思うのですが、如何なもんでしょう。
関係無いですが、佐喜は菜の花の花粉症なので、菜の花畑は好きなのに遠くから見る事しか出来ません。





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